昨年は優勝できた天皇杯ですが、今年も順調に勝ち上がり、四回戦まで進むことができました。この日、現地観戦したのですが、この試合は示唆に富む内容で、この記事もちょっと長くなりそうですね。
さて、東洋大学ですが、昭和生まれのわたくしが期待したような「学ランを着て、応援旗を掲げる応援団」や「チアガール」のような応援はなく、おそらく選手の家族とかベンチ外メンバーなどによるささやかですが熱い応援がされていました。
あと、今回特筆すべき点は、席が良かったことです。前から三列目ですごく迫力がありました。選手の叫び声が聞こえるくらいの位置でした。
そんな位置から観戦していたからこそ感じられたエピソードがあります。後半の給水タイムの時、ヴィッセル神戸の選手は、みんなメインスタンド側のベンチの方に行きましたが、なぜか汰木選手だけが一人だけ我々バックスタンド側のピッチ外に置かれていたクーラーボックスのところに来て、中に入っていた水を飲みました。そして、同じく中に入っていたバスタオルを取り出して、ビニール袋を破いてバスタオルを使いはじめました。その時、わたくしは、「それって永戸くんが使うヤツちゃうん?」とつぶやいてしまいました。そして、汰木選手は使い終わったバスタオルをその辺にポィっとしました。すると案の定、その後永戸選手がロングスローをする場面になり、永戸選手はもともとタオルがあったクーラーボックスを探します。その時、汰木選手が、自分がポイ捨てしたバスタオルを持って、「ここにあるよ」と教えていました。まぁ、試合中にありがちな普通の話にも見えますが、汰木選手らしいエピソードだな、と思います。
試合は、ヴィッセル神戸が井出選手のゴールで先制しますが、前半終了間際に東洋大学が、湯之前選手のゴールで追いつく展開。後半もヴィッセル神戸が攻めますが、東洋大学の守りが堅く、なかなか2点目が奪えません。そうこうしているうちに延長戦に入り、「これはPK戦に突入か?」と思われた延長戦後半アディショナルタイム突入直後にやっと宮代選手のゴールが決まり、勝利することができました。
この決勝ゴールに関して、いろいろ書き残しておきたいことがあります。まず、東洋大学は素晴らしいチームでありましたが、ゴールキーパーの背が低く、わたくしはそこが弱点と見ていました。後半開始時に息子に「相手のキーパーは背が低いから、上隅に射ったら決まるんちゃうか」と言いました。その予言はその後佐々木選手が上隅に放ったミドルシュートを東洋大学のゴールキーパーが見事に弾き、当たることはありませんでした。しかし、この決勝ゴールは、広瀬選手が上げた高いクロスを東洋大学のゴールキーパーが取りきれずに後にはじいてしまったことから生まれました。このあたりは、予言がちょっとかすったかなという感じです。
そんな予言はさておき、当のゴールを決めた宮代選手は試合後「相手キーパーはよくボールをはじいていたので、チャンスはあると思っていた」と語っています。当時の位置的にクロスのハイボールに対して、キーパーがいて、その真横に宮代選手がいたのですから、たしかにチャンスはあります。しかし、ただボーッと待っているのと、上記のような根拠を持って待つのとでは反応の質が違ってきます。
ただ、宮代選手はプロ選手であり、仕事でサッカーしており、さらにその報酬は常人のそれとは桁違いのものをもらっていることを考えるとそれくらいの注意深さは当たり前にも思えます。
といろいろ書いて来ましたが、なんとか延長戦で決勝点をもぎ取り、準々決勝にコマを進めることができました。その後、準々決勝もPK戦を勝ち抜き、準決勝進出が決まりました。準決勝の相手はサンフレッチェ広島です。宿命のライバルであり、正直言って強敵ですが、ここを撃破して2年連続の国立行きと行きたいところです。
今回もその次もヴィッセル神戸の相手は大学やJ3のチームでした。試合前から「格下やから」と根拠のない楽観論を語る人がいました。ここでわたくしが言いたいのは、「リーグ戦とトーナメントは違う」ということです。相手の「大学」とか「J3」とかいうのは、リーグのカテゴリーの話です。当然、それらのチームが、J1リーグに来て、ヴィッセル神戸と戦うことなど考えられないくらい差があります。しかし、天皇杯はトーナメントであり、リーグ戦とは違うものなのです。彼らはトーナメントとしての強さを持っていて、そこで強かったから、ベスト8なり、ベスト16なりまで勝ち上がってきたのです。
そして、それが天皇杯の面白さでもあり、難しさでもあるのです。
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