恵州での話
私が初めて恵州にいった時の話です。恵州は広州から長距離バスで1~2時間程度で行ける街ですが、正直言って、いなか街です。
初めて恵州の街に着いた私は、路線バスに乗りました。そして、バスの運転手に「蘇東坡記念館に行きたいんだが……」というような話をしました。少し話し込んでから、バスの運転手は私に「お前、この土地の人間じゃないな。どっから来た?」と聞きました。私は、素直に「日本から来た」と答えました。
すると、当時乗り合わせていた乗客(全部で5人くらい)がみんなビックリ。あるおばあさんは、「わたしゃ、東北の出身だけど、てっきりあんたは東北から来たと思いこんでたよ」などと言い出しました。
余談ですが、私は、中国の北部に行くと「お前、南から来たな」と言われ、南部に行くと「お前、北から来たな」と言われる程度の語学力の持ち主です。つまり、私のしゃべる中国語は「なんかヘン」と人に思わせるものがあるのです。
こんな田舎町ですから、外国人が珍しいんでしょう。私が日本人だとわかると、みんな私を取り巻いて、なんやかんやとしゃべり出しました。そのうち、乗客の一人が「でも日本は昔俺たちの敵だったんだよな」とポツリとつぶやきました。
そこで、明るかった雰囲気が一気に暗くなりました。くだんのおばあさんも「私のおじさんの家は日本軍に壊されたんだ」とつぶやきました。しかし、その時、バスの運転手が「でも、今は友達じゃないか。おい、日本語で友達って何て言うんだ?」と私に聞きました。私は彼に日本語で「トモダチ」と言いました。
「トモダチ……か。良い響きだ。今日は一つ日本語を覚えたぞ。トモダチだ」
そう言って運転手が明るく笑うと、車内も一気に明るくなりました。私は、この運転手の笑い声が、春のそよかぜと一緒に車内を流れていくように感じました。
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