中国の思い出:のび太のこと
今回は、中国で仕事をしていた時のことを書きます。
あの頃、わたくしには、最大で50人くらいの部下がいたのですが、その中で一人忘れられない人がいます。
ここで彼の名前を仮に「のび太」と呼びましょう。なぜなら、彼のあだ名は「大雄(中国版ドラえもんののび太のこと)」で、みんなからそう呼ばれていたし、わたくしもそう呼んでいたからです。
彼はそのあだ名が示すようにメガネを掛けていて、普段はあまり目立たない存在でした。ただ、背が高いので、見た目のインパクトはあるのですが、特に優秀なわけでもなく、ミスをするでもなく、普段はボーっとしていて昼行燈のような存在感のない若手社員でした。
ですので、彼が辞職するという話を聞いた時も、「早く後任を探さないと」くらいの感想しかありませんでした。まあ、彼のいた部署は、若い社員が多く定着率が低かったこともありますしね。
ところが、ある日課長が「のび太は辞職を1カ月伸ばします」と言ってきました。何でも「周辺他社とのバスケットボールの大会があり、本人が是非とも出たいと言っている」とかいうことでした。
その時も「彼は背が高いからバスケットボールでは有利だろう」くらいの感想しかありませんでした。会社としては、彼に少しでも長くいてもらった方がいいので、それはそれで良かったですし。
で、大会の当日、つまり、のび太が辞職手続きを済ませた日です。わたくしも大会を見に行きました。わが社のチームは、勝ったり負けたりで、大会中位くらいの成績でした。試合を見ていて、ふと「そういえばのび太が出ているはずだが」と思い出しました。そのとき、「のび太、ガンバレ」という女子社員たちの黄色い声が聞こえてきました。そこでよくよく見てみると、コートの真ん中で他の選手に指示を出しているイキイキとした中心選手に目がいきました。そうです。トレードマークのメガネをしていなかったので気づかなかったのですが、彼こそあののび太だったのです。
あの職場ではまったく冴えないのび太が、バスケットコートでは輝いて見えました。この件には、いろいろと考えさせられました。
翌日、わたくしは課長に「あののび太がバスケットコートではあんなにイキイキとしていた。やりようによっては、会社であのようにイキイキと仕事をさせることができたのではないか」と言いました。今、彼がどこで何をしているかはわかりません。しかし、あのイキイキとした彼であってくれたら、と思います。
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