楚江懷古
楚江懷古
馬戴
露氣寒光集,微陽下楚丘。
猿啼洞庭樹,人在木蘭舟。
廣澤生明月,蒼山夾亂流。
雲中君不見,竟夕自悲秋。
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久しぶりに漢詩の話を書きたいと思います。
この詩は、三首シリーズのうちの一首目です。題名からもわかる通り、長江(楚江)で昔に思いを馳せる(懐古)という内容なのですが、この詩を最初から読んでいっても、なかなか「懐古」要素が出てきません。で、最後の方で「雲中君」という形でやっと「懐古」要素が出てきます。そして、これをもって後に続く2首につながっていく、という形になっているようです。
上記は、ちうごく語アプリ内のちうごく語解説で知りました。これから下は、独自の感想です。
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この詩の「雲中君」ですが、この部分は、「掟破り」なのです。掟通りに読むとこの部分は、「雲中」「君不見」と切って読むことになります。しかし、「雲中君」は、固有名詞ですので、分けて読むわけにはいきません。そこでこの部分は「雲中君」「不見」と読まざるを得ません。五言詩でこんな切り方をする句はほとんどありません。なぜかというと、リズムが悪すぎて、耳障りだからです。わたくしのような凡人なら「不見」「雲中君」としたでしょう。これでも意味は同じですし、漢詩独特の平仄や韻を合わせるためなら、語順変えてもおkというルールもありますから。
じゃあ、なぜ詩人は、こんな切り方をしたのでしょう。そして、この詩が『唐詩三百首』に入るくらい人々に愛されて来たのでしょうか。
それは、この耳障りな部分が印象的だからです。わざと「雲中君」をこういう形で出して、読者に鮮烈な印象を与えたからです。ここで敢えて掟を破ることでこの神様の名前が浮き彫りにされたのです。そして、ここにおいて、「楚江」と「懐古」が合わさったのです。
五言とか七言がリズムで、平仄はメロディ、といった話はまた別の機会に初心者向けの文章を書きたいと思います。
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