民法第一条の話
第1条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
これは民法の第一条の条文です。わたくしが法律の勉強を本格的にするにあたり、民法を見てみました。そして、この第一条をみたとき、正直に言って、失望しました。
端的に言うと、「公共の福祉に適合」とか「信義則」とか「権利の濫用」などは、すごく大雑把な、テキトーな物言いです。勉強を始める前のわたくしは、「何が公共の福祉に適合しないのか」とか、どういう行為が信義則に反するのか」などを規定しているのが法律だと言う思っていました。それがこの物言いですよ。こんなのが第一条にあるんだったら、法律なんていらないとすら思いました。
今ではそこまで細かく規定していたらキリがないこと、どうしても「法の抜け穴」ができてしまうこともわかっています。しかも、この民法第一条は、その「法の抜け穴」をふさぐ伝家の宝刀というか、最後の必殺技のようなものなのだ、ということもわかっています。
よくドラマなどで悪人が「法の抜け穴」を見つけて悪事を働くということがあります。現実にも「これは違法ではないが、あまりにもひどい」という事例が最高裁に上がってくることがあります。そういうとき、つまり、法律の規定で裁ききれないとき、裁判所が使うのがこの伝家の宝刀なのです。「法律の文言通りに解釈すると悪事を認めざるを得ないが、民法第一条(や公序良俗違反を書いた同法90条)違反なのでダメ」ということにせざるを得ないことが時々起こってしまうのです。
しかし、なんでもかんでもそういうことにしてしまえば上に書いた「法律なんていらない」という話になってきます。なので、この手は「最後の必殺技」なのです。
というわけで、法は完璧なものではないのですね。逆に言うとこの世の中は法律で全てうまくいくというような簡単なものではないということです。
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