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2026.08.26

『天佑なり』下読了

上巻に引き続いての感想となります。正直、感想は上巻と被るところが大きいです。ただ、一部、変更があります。例えば、枡吉さんへの扱いについては、下巻で出てきたので、不満はかなり解消されました。

 

上巻は、日銀下関支店の支店長になるまで、という区切りです。量的なもので区切ったのでしょうが、いまいち意図の見えない区切りではあります。ただ、思ったのは、やはり『自伝』がある部分と『自伝』以後の部分では面白さが違いますね。『自伝』がある部分が圧倒的に面白いです。これは、『自伝』が本当によくできた本であるということもあるでしょうし、本当に政治家としての是清翁の人生がそれまでと比べて面白くなかったということもあるでしょう。是清翁は、詳細な日記も残していますし、言動に関しては、報道も含め、詳細な記録があるはずなので、『自伝』時代より、小説家としては、書きやすいはずなんですよね。

 

それがこうなってしまうということは、『自伝』時代の是清翁の人生が面白すぎたか、『自伝』自体が、粉飾されて面白くなっているのか、でしょうが、思えば政治家なんて、行動の自由が制限されていて、是清翁的な面白さが発揮しにくい立場ではあるんでしょうね。ただ、そんな中でも是清翁は、かなり自由に行動されていたように見えますけどね。

 

政治家といえば、下巻で期待していた「別離声明」事件が全くスルーされていたのは、遺憾ですね。個人的にもどういう事件かイメージが完全につかめていないので、作者の見解を知りたかったです。

 

あと、細かいですが、日銀総裁の川田さんが亡くなった時も、サラリと一行くらいで流されていて、あっさり風味が過ぎる感は否めませんでした。

 

それから、細かいシリーズですが、深井英伍さんが『自伝』に書き残した、シフ氏との相互訪問事件は、個人的には無茶苦茶好きなエピソードなのに扱いが小さくてちょっとガッカリしました。

 

あと、外債募集のところですが、わたくしがカタカナ人名に弱く、こんがらがってくるので、Googleで調べながら読んでいましたが、この辺で出てくる人って、本当にすごい人たちで、是清翁は本当に大仕事をしたんだなと思いました。まあ、ロスチャイルド家との関わりとかは、『随想録』でも出てくるので、この書でももっと掘り下げてほしいかなとも思いましたが。

 

外債募集のところで感動的なのは、シャンドさんですよね。横浜の金の柱の銀行にいたときは、是清翁は、イタズラばっかりする困った悪ガキだったと思うのですが、その悪ガキが、何十年か経ってから、日本政府代表として目の前に現れるのですから、ご本人はどんな気持ちがしたでしょう。そんな中で、かなり真剣に是清翁をサポートされていて、この人も日本のために頑張ってくれた人として、顕彰されるべきでは、と思いました。と思って今調べたら、4回も叙勲されていて、顕彰碑まで立ってるんですか。まあ、この人の件も泣けてくる話ですね。

 

そんな感じですかね。いずれにしても、読みやすく、スラスラと読めました。上巻の感想でも書きましたが、女性からの視点も多く、わたくしとしては結講違う視点から見た「是清翁像」が見えたという収穫もありました。

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