通訳と翻訳の話
久々に中国語の話をします。
標題の件ですが、一般の人から見るとほぼ同じジャンルの仕事に思えるかもしれませんね。しかし、この二つは全く別物です。
通訳は動いているものを捕まえる。翻訳は、動かないものを鑑定する。
わたくしはこんな感じでこれらの仕事を見ていました。
特に通訳の仕事はしんどいです。動いているものを捕まえるわけですから、反射神経が必要です。特にしんどいのは、中国語で話さなければならないことですね。中国語を日本語に訳すのは、そんなに難しくありません。中国語の話者の言葉がひどく訛っているとかでなければ、意味は取れますので、それを日本語にするのは簡単です。標準的な中国語を喋る話者の言葉が聞き取れないような人は通訳してないと思うので、ここではそういう論外な話は除外します。よしんば聞き取れなくても、最悪作ってしまうこともできます。作るというと語弊がありますね。正しくは、誤魔化すというか、そういう部分も一つのテクニックだと思います。
一度、自分の仕事とぜんぜん違う現場に呼び出されて通訳したことがありました。その現場で話されていることは、正直わたくしには何のことだかさっぱりわからなかったのです。仕方ないので、わたくしは、逐語的に通訳しました。すると、完璧に通じて、その時は感動しました。
あと、「これは言ってはいけない」という言葉もあります。日本人側がそういうことを言い出したら、そこをうまく誤魔化してやる必要があります。一度、同じ日に品質に関する表彰式と安全に関する表彰式をやったことがあって、その時に弊社(当時)のトップが、安全の表彰式なのに品質について語り出した時、途中から適当に作って安全に関する話に訳したことがありました。こういうのはAIには絶対できない芸当ですね。
通訳の問題は、日本語を中国語に直して話すことです。これがとにかく難しい。日本語のニュアンスをうまく中国語に移して話すことはネイティブレベルの人でないと無理でしょう。逆に中国人の通訳の方が日本語を話しているのを聞いていると「そんなに丁寧に喋ってないよ」と思うことがあります。特に偉い人の通訳は相手に忖度して、話者が謙っているようなイメージにしたがる人が多いような気がします。
わたくしにとって通訳というのはとても労力を使うしんどい仕事でした。特にしゃべるのが苦手(ここでいう苦手は、一般の学習者の皆様のいう苦手とは違うことは言っておきます)だったので、きつかったです。通訳はいわゆる「目から鼻に抜ける」タイプじゃないときついでしょうね。わたくしは、そういうタイプとは真逆の人間だったのでかなり苦労しました。
あと、会食の通訳もきついです。ご馳走にありつけるのですが、ずっとしゃべりっぱなしなので、ご飯を食べる暇がありません。一度、相手の中国人の方(かなり偉い人)が、「彼がご飯を食べられるように私たちは少し黙りましょう」と言ってくれたことがあって、その時はすごくありがたかったです。
もう一つの翻訳は得意だったのですが、特に面白かった翻訳の仕事を思い出しました。それは字幕翻訳です。中国にいた頃の会社がテレビ番組に取り上げられ、その動画に字幕をつけたのですが、これがすごく面白かったです。やる前は難しそうで嫌だったのですが、やってみるとノリノリになれて面白かったです。出来上がったものを見てもすごく満足できました。惜しむらくはあれを視聴した日本人はほとんどいないということです。
映画の字幕とかそういう仕事ができたら面白いだろうな、と思いますが、そんな機会はもうないでしょうね。


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